友野教授

「腹落ち」について

明治大学
情報コミュニケーション学科
元教授 友野典男様

この記事は、書籍「経営者のための経営するオフィス」のインタビューから一部抜粋したものです。

弊社 河口

友野教授

弊社 河口

河口:
 社員の行動が変わっていくような空間をつくる際、やはり前提として、経営陣の想いや、なぜ変化する必要があるのかをしっかりと話しておかないと、『システム1』だけに影響を及ぼしても、行動の変化が根付かないというか、しっかりしたものにならないと感じています。やはり納得や腹落ちをしたときに行動を変えやすいと思うのですが、それは『システム1』への影響なのでしょうか。

※『システム1』『システム2』については、以前掲載の対談をご参照下さい。

⇒ 対談:人の行動の8~9割を「システム1」が決める


友野教授:
 腹落ちということに関して正面から取り組んだ研究はないような気がします。しかし腹落ちは最終的に『システム1』が働いているのではないかと思います。ただし『システム1』の領域が判断する以前に『システム2』の領域で理解していて、それが『システム1』で感情的にも判断し、総合的に「なるほど!」となる。これが腹落ちの感覚ではないでしょうか。

 よく頭と腹は別といいますが、『システム1』は直感や感情なので、頭で考えても納得できないのです。人を説得して腹落ちで動いてもらうには、『システム1』と『システム2』の両方に働きかけることが必要なのだと思います。

河口:
 なるほど。『システム2』で理解をしているから、『システム1』が動いたときに、迷いなく行動することができる。それが腹落ちということですね。




友野教授:
 そうですね。腹落ちしているときは、確実に感情が関与していると思います。頭ではわかるが、何か納得がいかないというのは、そのことを感情的に不満や不快に思っているからです。こういう状況では『システム1』はとても強い働きをするのです。これが腹落ちしていない状態かと思います。

 『システム2』の頭だけで考えて行動するということがなかなかできない理由は、そういうことなのでしょう。 言っていることが正しいとか筋が通っているとか、いや間違っているなど、評論的なことは『システム2』の働きが大きくなります。そういう意味では、最終的には『システム1』が行動を司っているとしても、『システム2』で考えることはとても必要です。しかし、どんなに考え抜いたとしても、自分の中で妙な反発やあつれきが生まれることがあります。それは感情の部分で、「あいつが言ったことは嫌だ」とか、「こういう状況で言うことじゃないだろ」と感じ始めたら、『システム2』では正しいことと判断していたとしても、『システム1』では納得できなくなるからです。 これでは腹落ちできないですね。腹落ちさせるには、『システム1』と『システム2』が切り離せないということです。

河口:
 『システム1』も『システム2』も両方とも必要だということですね。私たちがオフィスづくりを手伝わせていただき、社長が社員の皆さまに新オフィスの説明をしていただく際には、新オフィスのコンセプトと共に、社長の想いを伝えていただくよう、お願いしています。「当社はいま、こういうステージで、次はここを目指したいので、社員の皆さんには、こうなってほしいと思っています」と、『システム2』に訴えかけてもらうのです。しかし、それだけでは行動はなかなか変わりません。合わせて『システム1』には、空間で行動が変わっていくよう訴えかけていきます。 これは、納得・腹落ちして仕事をしていただくには非常に有効ということですね。

この記事は、書籍「経営者のための経営するオフィス」の一部を抜粋したものです。
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「経営者のための経営するオフィス」著者:株式会社翔栄クリエイト 河口英二 1,650円(税込)

※翔栄クリエイトの頃(事業譲渡前)に出版したものです

明治大学情報コミュニケーション学部 元教授
友野 典男 様


早稲田大学商学部卒,同大学院経済学研究科修了。
明治大学情報コミュニケーション学部教授を経て,現在,同大学院情報コミュニケーション研究科講師。
専門は行動経済学。主要著訳書『行動経済学-経済は『感情』で動いている」(光文社),『感情と勘定の経済学』(潮出版社),『ダニエル・カーネマン心理と経済を語る』(楽工社)。

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「行動経済学 経済は「感情」で動いている」著者:友野典男 1,045円(税込)